2022年07月27日
ライブラリー リエバナ8月の展示お知らせ
中世スペインの彩色写本などをファクシミリ本(精巧な複製本)を中心に紹介しているライブラリー リエバナです。
8月の展示内容と開館日のご案内です。

8月も引き続き7月とは別の写本で黙示録の四騎士の描かれ方を見てみたいと思います。いずれも12世紀から13世紀に制作された写本で、ベアトゥスの写本群の中では遅い時期に当たります。
1)ベルリン写本

12世紀にイタリア中部で制作されたと思われる写本で、イベリア半島以外で制作された数少ない写本です。 縦302×横190と比較的小型の写本に55点の挿絵が描かれています。他のベアトゥス写本と違い、細いペン画が主体でところどころ薄い黄色や茶色・赤色で彩色されています。
(2)リスボン写本

1189年にポルトガルで制作された縦345×横245の中型サイズの写本で、88点の挿絵が描かれています。なんと言ってもその特徴は挿絵の地に使われた蛍光色の黄色とオレンジ色です。その古式な描き方から、ベアトゥスの元の原稿に近い古い写本から移されたのかもしれません。
(3)ウェルガス写本
ベアトゥス写本の中でも1220年というアローヨ写本に次ぐ遅い時期に製作された縦520×横364と最も大型の写本。

ヨハネの黙示録に関する約70点の挿絵とダニエル書の聖ヒエロニムスによる解説に伴う10点の挿絵を含む 全112点の挿絵が描かれています。ベアトゥス写本では珍しく、系図の中に創世記やマギの崇拝が描かれ、また東方三賢王の礼拝や荘厳のキリスト(マイエスタス・ドミニ)、エルサレム破壊における攻防などの場面、伝道者たちの肖像などが描かれています。
(4)アローヨ写本

アローヨ写本は現存する挿絵入りのベアトゥス写本群の中では最も新しい作(13世紀前半と考えられる)で、10世紀から続く伝統を保持しながらも、随所に新構想や新図像が認められる。12世紀後半以降の後期ベアトゥス写本グループの中で、ライランズ写本、カルディーニャ写本、ウェルガス写本の3冊と特に関連が深い。
大きさも縦440×横305と大型で、大桶の注文ということもあり金箔・銀箔が多数使用された豪華な写本です。
その他に、最初期の挿絵入り黙示録写本のトリーア黙示録写本(Trierer Apokalypse) や 、ベリー候の所有していた時祷書で有名な「大時祷書」と「美しき時祷書」を展示します。



ヨーロッパ中世の写本の世界が味わえます。
場所は、豊田市駅からすぐ近くのVITS豊田タウンの地下1階(市民ギャラリー前)です。 外階段から降りて頂くと便利です。
開館日はこちらで確認してください。 尚、8月は19時まで開店します。
8月の展示内容と開館日のご案内です。
8月も引き続き7月とは別の写本で黙示録の四騎士の描かれ方を見てみたいと思います。いずれも12世紀から13世紀に制作された写本で、ベアトゥスの写本群の中では遅い時期に当たります。
1)ベルリン写本
12世紀にイタリア中部で制作されたと思われる写本で、イベリア半島以外で制作された数少ない写本です。 縦302×横190と比較的小型の写本に55点の挿絵が描かれています。他のベアトゥス写本と違い、細いペン画が主体でところどころ薄い黄色や茶色・赤色で彩色されています。
(2)リスボン写本
1189年にポルトガルで制作された縦345×横245の中型サイズの写本で、88点の挿絵が描かれています。なんと言ってもその特徴は挿絵の地に使われた蛍光色の黄色とオレンジ色です。その古式な描き方から、ベアトゥスの元の原稿に近い古い写本から移されたのかもしれません。
(3)ウェルガス写本
ベアトゥス写本の中でも1220年というアローヨ写本に次ぐ遅い時期に製作された縦520×横364と最も大型の写本。
ヨハネの黙示録に関する約70点の挿絵とダニエル書の聖ヒエロニムスによる解説に伴う10点の挿絵を含む 全112点の挿絵が描かれています。ベアトゥス写本では珍しく、系図の中に創世記やマギの崇拝が描かれ、また東方三賢王の礼拝や荘厳のキリスト(マイエスタス・ドミニ)、エルサレム破壊における攻防などの場面、伝道者たちの肖像などが描かれています。
(4)アローヨ写本
アローヨ写本は現存する挿絵入りのベアトゥス写本群の中では最も新しい作(13世紀前半と考えられる)で、10世紀から続く伝統を保持しながらも、随所に新構想や新図像が認められる。12世紀後半以降の後期ベアトゥス写本グループの中で、ライランズ写本、カルディーニャ写本、ウェルガス写本の3冊と特に関連が深い。
大きさも縦440×横305と大型で、大桶の注文ということもあり金箔・銀箔が多数使用された豪華な写本です。
その他に、最初期の挿絵入り黙示録写本のトリーア黙示録写本(Trierer Apokalypse) や 、ベリー候の所有していた時祷書で有名な「大時祷書」と「美しき時祷書」を展示します。
ヨーロッパ中世の写本の世界が味わえます。
場所は、豊田市駅からすぐ近くのVITS豊田タウンの地下1階(市民ギャラリー前)です。 外階段から降りて頂くと便利です。
開館日はこちらで確認してください。 尚、8月は19時まで開店します。
2022年06月30日
ライブラリー リエバナ 7月の展示お知らせ
中世スペインの彩色写本などをファクシミリ本(精巧な複製本)を中心に紹介しているライブラリー リエバナです。
7月の展示内容と開館日のご案内です。

今月は黙示録の中でもよくでてくる四騎士の描かれ方を見てみたいと思います。
四騎士とは4つの封印を解くと馬に乗って現れる者たちで、白い馬に乗る「征服者」、剣を持ち、赤い馬に乗る「戦争」、天秤を持ち、黒い馬に乗る「飢饉」、青白い馬に乗りハデス(黄泉)を従える「死」が現れ人間に災いをもたらします。一般的に四騎士と呼ぶことが多いですが、聖書の原典には「騎士」に相当する単語は記されておらず、そのため日本語訳聖書も「それ(馬)に乗っている者」(新改訳)「それにまたがった者」(フランシスコ会訳)という訳語になっています。
ベアトゥスは白い馬の乗る第一の騎士を他の三騎士と区別して解釈しています。ベアトゥスによれば、この馬は「教会」で、それにまたがるものはキリストである。キリストは昇天し、その後人々の元に現れ、そして精霊を送った。キリストの精霊の一吹きが、説教者たちの霊感を満たしたのである。その言葉は、弓矢のように人々の心を射抜いた。勝利の冠はこれらの説教者たちに捧げられる、と解釈された。(ベアトゥス黙示録註解書 ファクンドゥス写本 ホアキン・ジャルサ・ルアセス 安發和彰訳より)
①ウルジェイ写本の4騎士 Ⅱ群aの標準的な描き方です。青白い馬(右下の馬)はハデスを従えています。

②サン・スヴェール写本 Ⅰ群に属する写本。見開きに描かれているのが特徴でハデスを従えていません。

③オスーマ写本 これもⅠ群の写本で、やはりハデスは描かれていません。

④マンチェスター写本(ライランズ写本) Ⅱ群bに属する写本。ハデスが描かれていますが、4騎士のほかに4つの生き物(4福音書記者)も描かれています(Ⅰ群のサン・スヴェール写本にも描かれています)。

その他に道徳写本(Bible Moralisée(Codex Vindobonensis 2554) や 新約聖書写本(Vat. Lat. 39)、絵解き聖書である「貧者の聖書」に黙示録が追加された大型の写本(Weimar Biblia Pauperum/Apocalypse)も展示します。



ヨーロッパ中世の写本の世界が味わえます。
場所は、豊田市駅からすぐ近くのVITS豊田タウンの地下1階(市民ギャラリー前)です。 外階段から降りて頂くと便利です。
7月の開店日はこちらに掲載しています。
水・木・金・日が開店日ですが、
7月1日と7月28日は13:00~開店
です。
ぜひお越しください。
7月の展示内容と開館日のご案内です。
今月は黙示録の中でもよくでてくる四騎士の描かれ方を見てみたいと思います。
四騎士とは4つの封印を解くと馬に乗って現れる者たちで、白い馬に乗る「征服者」、剣を持ち、赤い馬に乗る「戦争」、天秤を持ち、黒い馬に乗る「飢饉」、青白い馬に乗りハデス(黄泉)を従える「死」が現れ人間に災いをもたらします。一般的に四騎士と呼ぶことが多いですが、聖書の原典には「騎士」に相当する単語は記されておらず、そのため日本語訳聖書も「それ(馬)に乗っている者」(新改訳)「それにまたがった者」(フランシスコ会訳)という訳語になっています。
ベアトゥスは白い馬の乗る第一の騎士を他の三騎士と区別して解釈しています。ベアトゥスによれば、この馬は「教会」で、それにまたがるものはキリストである。キリストは昇天し、その後人々の元に現れ、そして精霊を送った。キリストの精霊の一吹きが、説教者たちの霊感を満たしたのである。その言葉は、弓矢のように人々の心を射抜いた。勝利の冠はこれらの説教者たちに捧げられる、と解釈された。(ベアトゥス黙示録註解書 ファクンドゥス写本 ホアキン・ジャルサ・ルアセス 安發和彰訳より)
①ウルジェイ写本の4騎士 Ⅱ群aの標準的な描き方です。青白い馬(右下の馬)はハデスを従えています。
②サン・スヴェール写本 Ⅰ群に属する写本。見開きに描かれているのが特徴でハデスを従えていません。
③オスーマ写本 これもⅠ群の写本で、やはりハデスは描かれていません。
④マンチェスター写本(ライランズ写本) Ⅱ群bに属する写本。ハデスが描かれていますが、4騎士のほかに4つの生き物(4福音書記者)も描かれています(Ⅰ群のサン・スヴェール写本にも描かれています)。
その他に道徳写本(Bible Moralisée(Codex Vindobonensis 2554) や 新約聖書写本(Vat. Lat. 39)、絵解き聖書である「貧者の聖書」に黙示録が追加された大型の写本(Weimar Biblia Pauperum/Apocalypse)も展示します。

ヨーロッパ中世の写本の世界が味わえます。
場所は、豊田市駅からすぐ近くのVITS豊田タウンの地下1階(市民ギャラリー前)です。 外階段から降りて頂くと便利です。
7月の開店日はこちらに掲載しています。
水・木・金・日が開店日ですが、
7月1日と7月28日は13:00~開店
です。
ぜひお越しください。
2022年05月30日
ライブラリー リエバナ 6月の展示お知らせ
中世スペインの彩色写本などをファクシミリ本(精巧な複製本)を中心に紹介しているライブラリー リエバナです。
6月の展示内容と開館日のご案内です。

今回のベアトゥスの黙示録註解書写本の紹介は、黙示録のなかで描かれている『太陽をまとう女と竜』という部分の挿絵を、いくつかの写本で比較したいと思います。これはヨハネの黙示録12章にしるされている幻視です。
ベアトゥス写本では、この一連の物語を1枚の挿絵の中に表現しています。(異時同時図法というそうです)
・太陽を身にまとい、月を足の下に、12の星を冠にした女が出現する。(挿絵左上)
・中央の竜は女が子を産んだら食べようとしていた。女は男の子を産み、その子は髪の玉座に引き上げられる。(挿絵右上)
女は荒野に逃げ込み、天では大天使ミカエルたちが竜に戦いを挑み、龍を打ち負かす。(中央上)
竜と全人類を惑わすものは地上に投げ落とされる(右下)
竜は女を追うが女には鷲の翼が与えられて荒野に逃れると、龍は口から川のような水を吐き出して女を押し流そうとするが、大地が女を助けた。(左下) (「世界でもっとも美しい装飾写本」 田中久美子著より)
ファクンドゥス写本の挿絵です。

上記のように、黙示録の中で順番に描かれている場面が、一つの挿絵のいろいろな場所に描かれています。
次はモーガン写本です。 今回の4つの写本の中では一番古い写本で10世紀中頃に製作されたと考えられています。

これはジローナ写本です。2番目に古い写本で975年に完成しました。

最後はシロス写本で一番新しい写本で1109年完成です。

これら4つの写本は同じ系統(Ⅱ群)の写本の為、場面が描かれている位置は大体同じところになっています。
そのほか、詩編写本も展示します。これは本文周縁部に中世の生活(農業、狩猟、娯楽、音楽制作)が描かれていて、14世紀の日常生活が窺われるとともに、人間の頭、動物/魚/鳥の体、植物の尾を組み合わせた想像上のハイブリッド怪物も多数描かれています。


四月の開店日はこちらに掲載しています。
水・木・金・日が開店日ですが、
6月29日はお休み
6月3日と6月24日は13:00~開店
です。
ぜひお越しください。
6月の展示内容と開館日のご案内です。
今回のベアトゥスの黙示録註解書写本の紹介は、黙示録のなかで描かれている『太陽をまとう女と竜』という部分の挿絵を、いくつかの写本で比較したいと思います。これはヨハネの黙示録12章にしるされている幻視です。
ベアトゥス写本では、この一連の物語を1枚の挿絵の中に表現しています。(異時同時図法というそうです)
・太陽を身にまとい、月を足の下に、12の星を冠にした女が出現する。(挿絵左上)
・中央の竜は女が子を産んだら食べようとしていた。女は男の子を産み、その子は髪の玉座に引き上げられる。(挿絵右上)
女は荒野に逃げ込み、天では大天使ミカエルたちが竜に戦いを挑み、龍を打ち負かす。(中央上)
竜と全人類を惑わすものは地上に投げ落とされる(右下)
竜は女を追うが女には鷲の翼が与えられて荒野に逃れると、龍は口から川のような水を吐き出して女を押し流そうとするが、大地が女を助けた。(左下) (「世界でもっとも美しい装飾写本」 田中久美子著より)
ファクンドゥス写本の挿絵です。
上記のように、黙示録の中で順番に描かれている場面が、一つの挿絵のいろいろな場所に描かれています。
次はモーガン写本です。 今回の4つの写本の中では一番古い写本で10世紀中頃に製作されたと考えられています。
これはジローナ写本です。2番目に古い写本で975年に完成しました。
最後はシロス写本で一番新しい写本で1109年完成です。
これら4つの写本は同じ系統(Ⅱ群)の写本の為、場面が描かれている位置は大体同じところになっています。
そのほか、詩編写本も展示します。これは本文周縁部に中世の生活(農業、狩猟、娯楽、音楽制作)が描かれていて、14世紀の日常生活が窺われるとともに、人間の頭、動物/魚/鳥の体、植物の尾を組み合わせた想像上のハイブリッド怪物も多数描かれています。
四月の開店日はこちらに掲載しています。
水・木・金・日が開店日ですが、
6月29日はお休み
6月3日と6月24日は13:00~開店
です。
ぜひお越しください。
2022年05月07日
ライブラリー リエバナ 5月の展示お知らせ
中世スペインの彩色写本などをファクシミリ本(精巧な複製本)を中心に紹介しているライブラリー リエバナです。
5月の展示内容と開館日のご案内です。

5月は8日(日)より開店します。詳細はこちらで確認してください。

今回は制作されてから1000年近くの間に切り取られたり落書きされたりした後を見てみたいと思います。
【マドリード写本】半分ほどの挿絵が切り取られ、残った挿絵の数は27点になっています。 もっと挿絵を見たかった。

頁の半分以上が破り取られています。

こちらも切り取られています。
【カルデーニャ写本】これも半分ほど切り取られていますが51点の挿絵が残っています。また、残存する写本も分散していて、4か所で保管されています。

大部分が切り取られています。

こちらもほとんどが破り取られてしまい、残っている部分はわずかです。
【コルシーニ写本】一番小さな写本ですが、切り取られている部分が多く挿絵は8点しか残存していない。オリジナルはおそらく90ほどの挿絵が描かれていたと考えられるが、大半が生き残っていません。

大きく切り取られた部分

後世の人が書いたと思われる絵
やはり美しいものを見ると自分のものにしたくなるようで、当時の写本は欠落があるのがふつうです。
5月の展示内容と開館日のご案内です。
5月は8日(日)より開店します。詳細はこちらで確認してください。

今回は制作されてから1000年近くの間に切り取られたり落書きされたりした後を見てみたいと思います。
【マドリード写本】半分ほどの挿絵が切り取られ、残った挿絵の数は27点になっています。 もっと挿絵を見たかった。
頁の半分以上が破り取られています。
こちらも切り取られています。
【カルデーニャ写本】これも半分ほど切り取られていますが51点の挿絵が残っています。また、残存する写本も分散していて、4か所で保管されています。
大部分が切り取られています。
こちらもほとんどが破り取られてしまい、残っている部分はわずかです。
【コルシーニ写本】一番小さな写本ですが、切り取られている部分が多く挿絵は8点しか残存していない。オリジナルはおそらく90ほどの挿絵が描かれていたと考えられるが、大半が生き残っていません。
大きく切り取られた部分
後世の人が書いたと思われる絵
やはり美しいものを見ると自分のものにしたくなるようで、当時の写本は欠落があるのがふつうです。
2022年05月03日
『中世ヨーロッパ彩色写本展』終了しました
4月28日~5月2日の間で市民ギャラリーで行っていました「中世ヨーロッパ彩色写本展」は無事終了しました。
この間約80名の方に来場いただきました。名古屋や三重県など豊田市外はもとより、遠く東京からいらした方もみえ、うれしい限りでした。来場いただいた方々は本当にありがとうございました。通常手に触れることの難しいファクシミリ本もそれぞれページをめくってみていただき、中世写本の雰囲気を味わっていただけたかと思います。なかには3時間以上見ていただいた方もみえ、お体が大丈夫か心配になりました。





次回開催できるかどうかはわかりませんが、数は少ないですが市民ギャラリー横の「ライブラリーリエバナ」にて展示していますので、もしご興味がありましたらお越しいただければと思います。
この間約80名の方に来場いただきました。名古屋や三重県など豊田市外はもとより、遠く東京からいらした方もみえ、うれしい限りでした。来場いただいた方々は本当にありがとうございました。通常手に触れることの難しいファクシミリ本もそれぞれページをめくってみていただき、中世写本の雰囲気を味わっていただけたかと思います。なかには3時間以上見ていただいた方もみえ、お体が大丈夫か心配になりました。

次回開催できるかどうかはわかりませんが、数は少ないですが市民ギャラリー横の「ライブラリーリエバナ」にて展示していますので、もしご興味がありましたらお越しいただければと思います。
2022年05月02日
彩飾写本展今日までです
市民ギャラリーで行っている「中世ヨーロッパ彩飾写本展」は今日までです。

ぜひ見にきてください。
オリジナル写本を精巧に複製したファクシミリ本が多数あります。 中世の写本の世界を楽しんでください。





羊皮紙に書かれたオリジナルの写本も手に取っていただけます。
お待ちしています。
ぜひ見にきてください。
オリジナル写本を精巧に複製したファクシミリ本が多数あります。 中世の写本の世界を楽しんでください。
羊皮紙に書かれたオリジナルの写本も手に取っていただけます。
お待ちしています。
2022年04月28日
『中世ヨーロッパ彩色写本展』始まりました
今日から彩色写本展を始めます。場所はVITS豊田タウンの地下にある市民ギャラリーです。

中世のヨーロッパで作られていた手書きの写本の美しさをぜひご覧いただきたく。
会場の様子です。広いスペースですので、ゆっくりご覧いただけます。





中世のヨーロッパで作られていた手書きの写本の美しさをぜひご覧いただきたく。
会場の様子です。広いスペースですので、ゆっくりご覧いただけます。
2022年04月26日
『中世ヨーロッパ彩色写本展』展示写本の紹介
市民ギャラリーにて、4月28日~5月2日にかけて、彩色写本展を行います。

中世のヨーロッパで作られていた手書きの写本の美しさをぜひご覧いただきたく。 (無料です)
今回はオリジナルの写本を紹介します。
①エチオピア聖書?
内容も制作年代も不明ですが、たぶん17-18世紀頃のエチオピア聖書ではないかと思います。11㎝×90㎝程の大きさの片手で持てる小型の写本です。ゲエズ語というエチオピアで使われていた文字で書かれています。ゲエズ語は紀元前より使用されている言葉で、10世紀には話し言葉では使われなくなったが、19世紀半ばまで書き言葉として残り、キリスト教の典礼言語および公式の文章語として使われ続けました。ゲーズ語、古代エチオピア語とも呼びます。

羊皮紙に黒インクと赤インクで書かれています。
挿絵からエチオピア聖書の一種かと思いますが、詳細は不明です。


表紙が木の板で作られており、コプト綴じで綴じられていて、製本様式は中世初期の様式になっています。
また、羊皮紙の破れたところが縫って補修されていたりと当時の修理の様子が感じられます。

②ネウマ譜
中世の教会や修道院でで歌われていた聖歌の楽譜です。

もともと記憶を頼りに歌われていました。しかし、9世紀中頃からそれを記譜するようになります。といっても、最初は言葉のアクセントやニュアンスを伝える様々な記号が各地で用いられていましたが、
12世紀中頃以後に4本線が登場し、13世紀に定着します。聖歌は1オクターヴの音域で間に合うので4本の線で足りるのです。このような初期の楽譜を、ネウマ譜といいます。 そこでは、音の高さが相対的に示されるものの、音符の長さは分かりません。また、拍子記号や小節線はない代わりに、フレーズ(段落)を示す縦線が見られます。
ネウマ譜は4本の譜線が一般的ですが、5本の譜線もあります。通常は音域の広い歌い方ではなく、ごく自然に発声して歌っていたものと思います。ですから音域は1オクターブ+1音でこと足りていました。 (ブログ「幻の音楽 Papalin」より)
今回は以上です。 またご紹介したいと思います。
展示会にぜひお越しください。
中世のヨーロッパで作られていた手書きの写本の美しさをぜひご覧いただきたく。 (無料です)
今回はオリジナルの写本を紹介します。
①エチオピア聖書?
内容も制作年代も不明ですが、たぶん17-18世紀頃のエチオピア聖書ではないかと思います。11㎝×90㎝程の大きさの片手で持てる小型の写本です。ゲエズ語というエチオピアで使われていた文字で書かれています。ゲエズ語は紀元前より使用されている言葉で、10世紀には話し言葉では使われなくなったが、19世紀半ばまで書き言葉として残り、キリスト教の典礼言語および公式の文章語として使われ続けました。ゲーズ語、古代エチオピア語とも呼びます。
羊皮紙に黒インクと赤インクで書かれています。
挿絵からエチオピア聖書の一種かと思いますが、詳細は不明です。

表紙が木の板で作られており、コプト綴じで綴じられていて、製本様式は中世初期の様式になっています。
また、羊皮紙の破れたところが縫って補修されていたりと当時の修理の様子が感じられます。
②ネウマ譜
中世の教会や修道院でで歌われていた聖歌の楽譜です。

もともと記憶を頼りに歌われていました。しかし、9世紀中頃からそれを記譜するようになります。といっても、最初は言葉のアクセントやニュアンスを伝える様々な記号が各地で用いられていましたが、
12世紀中頃以後に4本線が登場し、13世紀に定着します。聖歌は1オクターヴの音域で間に合うので4本の線で足りるのです。このような初期の楽譜を、ネウマ譜といいます。 そこでは、音の高さが相対的に示されるものの、音符の長さは分かりません。また、拍子記号や小節線はない代わりに、フレーズ(段落)を示す縦線が見られます。
ネウマ譜は4本の譜線が一般的ですが、5本の譜線もあります。通常は音域の広い歌い方ではなく、ごく自然に発声して歌っていたものと思います。ですから音域は1オクターブ+1音でこと足りていました。 (ブログ「幻の音楽 Papalin」より)
今回は以上です。 またご紹介したいと思います。
展示会にぜひお越しください。
2022年04月24日
『中世ヨーロッパ彩色写本展』展示写本の紹介
市民ギャラリーにて、4月28日~5月2日にかけて、彩色写本展を行います。

中世のヨーロッパで作られていた手書きの写本の美しさをぜひご覧いただきたく。 (無料です)
今回は「プトレマイオスの世界地図」と「ベアトゥス写本群の世界地図」を紹介します。
展示している「プトレマイオスの世界地図」は、1406年ヤコボ・アンジェロのラテン語訳になるプトレマイオスの「地理学」の数多くの版の中で、地図的表現および描写の精密さという点で、最も丹念に制作されたものの1つです。

プトレマイオス自身が作成した地図は失われましたが、「地理学」に記された当時の様々な場所(約8000か所)の座標情報が記されており、「地理学」が1300年頃に再評価された際、その座標情報を使い、地図製作者はプトレマイオスの世界像を再構成することができました。現存する最古のプトレマイオス図は、12-13世紀に制作されたギリシャ語表記のものです。
地図は下記の構成になっています。
①居住空間又は既知の世界の地図
②ヨーロッパ図 10図
③リビア・アフリカ 4図
④アジア 12図
下の2点はヨーロッパ図の中のイギリスとスペインの地図です。ギリシャ・ローマ時代の完成度には驚かされます。


一方、ベアトゥスの黙示録註解書に描かれている世界地図ですが、黙示録を含めた聖書には出てこない「世界地図」がなぜ描かれているのか。 これは註解に挿入された「語源論」などを図像化したものだそうです。
これらの地図にはイスラーム圏の都市への言及がないことから、「現実の世界」ではなく「キリスト教徒にとってあるべき世界の世界」が描かれているといえるが、その一方、レコンキスタによって新たにキリスト教圏に組み入れられた都市が次々に付け加えられる点に現実世界の反映を認めることもできる。
久米順子「千年紀を超えて-レコンキスタの進展と盛期中世のベアトゥス写本」等より
このような世界地図をOT図(またはTO図)と呼び、完本22写本のうち14写本に世界地図が描かれています。
キリスト教会は古代科学を異端だとして排撃し、聖書こそが正しいとする価値観を作り出したのです。
中世のキリスト教会においては、地球球体説は否定されました。もし地球が丸いなら、自分たちの足の下(地球の裏側)には、別の人々が暮らしていることになります。これは教会としては許せないことだと見なされたのです。


OT図(TO図)の特徴は、
特徴① 東を上にする
TOマップでは東を上にします。東を上にする理由は、旧約聖書の創世記から読み取れます。神がエデンの園を東の果てに作ったという記述があるからです。
東が上 ← エデンの園は東の果てにある
特徴② 中心は聖地エルサレム
TOマップの中心、つまり円の中心点には、キリスト教の聖地エルサレムが描かれています。
特徴③ T字は川と海
T字は、3つの旧大陸を分ける境界線です。
中心から見て下方(西)へ伸びる線が地中海です。ヨーロッパとアフリカの境界線です。
中心から見て右方(南)へ伸びる線がナイル川(または紅海)です。アジアとアフリカの境界線です。
中心から見て左方(北)へ伸びる線がドン川です。ヨーロッパとアジアの境界線です。
(注:これら境界線とされた地形は、現在の境界線とは異なります)
特徴④ 外周は海
外周は海です。オケアノスと呼ばれます。英語のオーシャンのことです。
この海の外側には何もないわけではなく、外の陸地が存在すると考えられています。
(ジオグラファーズ ~無料で地理を学べるブログサイト~ より 引用)
古代ギリシャ・ローマ時代には「地球は丸い」という科学的根拠に基づいて世界地図が描かれていましたが、キリスト教世界では別の世界がありました。
中世のヨーロッパで作られていた手書きの写本の美しさをぜひご覧いただきたく。 (無料です)
今回は「プトレマイオスの世界地図」と「ベアトゥス写本群の世界地図」を紹介します。
展示している「プトレマイオスの世界地図」は、1406年ヤコボ・アンジェロのラテン語訳になるプトレマイオスの「地理学」の数多くの版の中で、地図的表現および描写の精密さという点で、最も丹念に制作されたものの1つです。
プトレマイオス自身が作成した地図は失われましたが、「地理学」に記された当時の様々な場所(約8000か所)の座標情報が記されており、「地理学」が1300年頃に再評価された際、その座標情報を使い、地図製作者はプトレマイオスの世界像を再構成することができました。現存する最古のプトレマイオス図は、12-13世紀に制作されたギリシャ語表記のものです。
地図は下記の構成になっています。
①居住空間又は既知の世界の地図
②ヨーロッパ図 10図
③リビア・アフリカ 4図
④アジア 12図
下の2点はヨーロッパ図の中のイギリスとスペインの地図です。ギリシャ・ローマ時代の完成度には驚かされます。
一方、ベアトゥスの黙示録註解書に描かれている世界地図ですが、黙示録を含めた聖書には出てこない「世界地図」がなぜ描かれているのか。 これは註解に挿入された「語源論」などを図像化したものだそうです。
これらの地図にはイスラーム圏の都市への言及がないことから、「現実の世界」ではなく「キリスト教徒にとってあるべき世界の世界」が描かれているといえるが、その一方、レコンキスタによって新たにキリスト教圏に組み入れられた都市が次々に付け加えられる点に現実世界の反映を認めることもできる。
久米順子「千年紀を超えて-レコンキスタの進展と盛期中世のベアトゥス写本」等より
このような世界地図をOT図(またはTO図)と呼び、完本22写本のうち14写本に世界地図が描かれています。
キリスト教会は古代科学を異端だとして排撃し、聖書こそが正しいとする価値観を作り出したのです。
中世のキリスト教会においては、地球球体説は否定されました。もし地球が丸いなら、自分たちの足の下(地球の裏側)には、別の人々が暮らしていることになります。これは教会としては許せないことだと見なされたのです。

OT図(TO図)の特徴は、
特徴① 東を上にする
TOマップでは東を上にします。東を上にする理由は、旧約聖書の創世記から読み取れます。神がエデンの園を東の果てに作ったという記述があるからです。
東が上 ← エデンの園は東の果てにある
特徴② 中心は聖地エルサレム
TOマップの中心、つまり円の中心点には、キリスト教の聖地エルサレムが描かれています。
特徴③ T字は川と海
T字は、3つの旧大陸を分ける境界線です。
中心から見て下方(西)へ伸びる線が地中海です。ヨーロッパとアフリカの境界線です。
中心から見て右方(南)へ伸びる線がナイル川(または紅海)です。アジアとアフリカの境界線です。
中心から見て左方(北)へ伸びる線がドン川です。ヨーロッパとアジアの境界線です。
(注:これら境界線とされた地形は、現在の境界線とは異なります)
特徴④ 外周は海
外周は海です。オケアノスと呼ばれます。英語のオーシャンのことです。
この海の外側には何もないわけではなく、外の陸地が存在すると考えられています。
(ジオグラファーズ ~無料で地理を学べるブログサイト~ より 引用)
古代ギリシャ・ローマ時代には「地球は丸い」という科学的根拠に基づいて世界地図が描かれていましたが、キリスト教世界では別の世界がありました。
2022年04月20日
『中世ヨーロッパ彩色写本展』展示写本の紹介
市民ギャラリーにて、4月28日~5月2日にかけて、彩色写本展を行います。

中世のヨーロッパで作られていた手書きの写本の美しさをぜひご覧いただきたく。 (無料です)
今回は動物の写本や医学写本などを紹介します。
①動物寓意書
12世紀中頃から13世紀中頃にかけてイギリスで流行した挿絵付きのけもの図鑑の代表写本。陸上の獣・空を飛ぶ獣・海の獣に分けられて、それぞれ野生動物から空想上の幻想的な獣までその習性と特徴とをキリスト教的教訓とを結びつけて、そこに寓意や諷刺を込めた内容となっています。
140匹以上の説明が135点の挿絵とともに描かれていて、キリスト教徒の道徳的教化、布教に大きな役割を果たしました。
最初に出て来る動物はライオンです。

(上段)猿を食べて自分の病気をなおすライオン
(中段)3人の旅行者の命を救う慈悲深いライオン
(下段)白い雄鶏を恐れるライオン

(上段)山の頂上を歩き回るライオン
(中段)ライオンと3匹の幼い子供ライオン
(下段)2匹のライオンが、生後3日の赤ちゃんライオンを生き返らせる
次は象に乗った兵士です。

城のような砦を背に乗せた象。砦の兵士が象を取り巻く敵の軍隊を攻撃している場面。
想像上の生物として、まずはフェニックスです。

木の枝に作られた燃える薪のなかで羽を広げて甦るフェニックス。
次にセーレンです。

セイレーンは、もともとは半人半鳥で下半身は鳥のギリシャ神話の怪物でしたが、中世では下半身が魚で描かれることが多くなりました。姉妹で描かれ、この絵では3姉妹になっています。 美しい歌声で人を惑わし、海に引きずりこんだり、食べたりすると恐れられていました。 同様な精霊で川に住む魔物にローレライがいます。
②カノッサのマチティルダ伝
有名な「カノッサの屈辱」の舞台となったカノッサ城砦の主マティルダの伝記です。 カノッサ家の歴史やマティルダの生涯が記されています。

マティルダの肖像です。

「カノッサの屈辱」の場面で、玉座のマティルダに跪いて教皇への取次ぎを嘆願するハインリヒ4世を描いています。
右側の座っている女性がマティルダ伯です。中央で跪いているのがハインリヒ4世で、左の人物はクリュニー修道院長ユーグで、当時の修道会では非常に権威を持っていて、この時はハインリヒ4世の代父として「叙任権闘争」での調停役を務めたが、成功には至らなかった。
今回は以上です。 また紹介したいと思います。
展示会にぜひお越しください。
中世のヨーロッパで作られていた手書きの写本の美しさをぜひご覧いただきたく。 (無料です)
今回は動物の写本や医学写本などを紹介します。
①動物寓意書
12世紀中頃から13世紀中頃にかけてイギリスで流行した挿絵付きのけもの図鑑の代表写本。陸上の獣・空を飛ぶ獣・海の獣に分けられて、それぞれ野生動物から空想上の幻想的な獣までその習性と特徴とをキリスト教的教訓とを結びつけて、そこに寓意や諷刺を込めた内容となっています。
140匹以上の説明が135点の挿絵とともに描かれていて、キリスト教徒の道徳的教化、布教に大きな役割を果たしました。
最初に出て来る動物はライオンです。
(上段)猿を食べて自分の病気をなおすライオン
(中段)3人の旅行者の命を救う慈悲深いライオン
(下段)白い雄鶏を恐れるライオン
(上段)山の頂上を歩き回るライオン
(中段)ライオンと3匹の幼い子供ライオン
(下段)2匹のライオンが、生後3日の赤ちゃんライオンを生き返らせる
次は象に乗った兵士です。
城のような砦を背に乗せた象。砦の兵士が象を取り巻く敵の軍隊を攻撃している場面。
想像上の生物として、まずはフェニックスです。
木の枝に作られた燃える薪のなかで羽を広げて甦るフェニックス。
次にセーレンです。
セイレーンは、もともとは半人半鳥で下半身は鳥のギリシャ神話の怪物でしたが、中世では下半身が魚で描かれることが多くなりました。姉妹で描かれ、この絵では3姉妹になっています。 美しい歌声で人を惑わし、海に引きずりこんだり、食べたりすると恐れられていました。 同様な精霊で川に住む魔物にローレライがいます。
②カノッサのマチティルダ伝
有名な「カノッサの屈辱」の舞台となったカノッサ城砦の主マティルダの伝記です。 カノッサ家の歴史やマティルダの生涯が記されています。
マティルダの肖像です。
「カノッサの屈辱」の場面で、玉座のマティルダに跪いて教皇への取次ぎを嘆願するハインリヒ4世を描いています。
右側の座っている女性がマティルダ伯です。中央で跪いているのがハインリヒ4世で、左の人物はクリュニー修道院長ユーグで、当時の修道会では非常に権威を持っていて、この時はハインリヒ4世の代父として「叙任権闘争」での調停役を務めたが、成功には至らなかった。
今回は以上です。 また紹介したいと思います。
展示会にぜひお越しください。