2022年04月28日

『中世ヨーロッパ彩色写本展』始まりました

今日から彩色写本展を始めます。場所はVITS豊田タウンの地下にある市民ギャラリーです。

中世のヨーロッパで作られていた手書きの写本の美しさをぜひご覧いただきたく。

会場の様子です。広いスペースですので、ゆっくりご覧いただけます。











  


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2022年04月26日

『中世ヨーロッパ彩色写本展』展示写本の紹介

市民ギャラリーにて、4月28日~5月2日にかけて、彩色写本展を行います。

中世のヨーロッパで作られていた手書きの写本の美しさをぜひご覧いただきたく。 (無料です)

今回はオリジナルの写本を紹介します。

①エチオピア聖書?
内容も制作年代も不明ですが、たぶん17-18世紀頃のエチオピア聖書ではないかと思います。11㎝×90㎝程の大きさの片手で持てる小型の写本です。ゲエズ語というエチオピアで使われていた文字で書かれています。ゲエズ語は紀元前より使用されている言葉で、10世紀には話し言葉では使われなくなったが、19世紀半ばまで書き言葉として残り、キリスト教の典礼言語および公式の文章語として使われ続けました。ゲーズ語、古代エチオピア語とも呼びます。

羊皮紙に黒インクと赤インクで書かれています。
挿絵からエチオピア聖書の一種かと思いますが、詳細は不明です。



表紙が木の板で作られており、コプト綴じで綴じられていて、製本様式は中世初期の様式になっています。
また、羊皮紙の破れたところが縫って補修されていたりと当時の修理の様子が感じられます。


②ネウマ譜
中世の教会や修道院でで歌われていた聖歌の楽譜です。


もともと記憶を頼りに歌われていました。しかし、9世紀中頃からそれを記譜するようになります。といっても、最初は言葉のアクセントやニュアンスを伝える様々な記号が各地で用いられていましたが、
12世紀中頃以後に4本線が登場し、13世紀に定着します。聖歌は1オクターヴの音域で間に合うので4本の線で足りるのです。このような初期の楽譜を、ネウマ譜といいます。 そこでは、音の高さが相対的に示されるものの、音符の長さは分かりません。また、拍子記号や小節線はない代わりに、フレーズ(段落)を示す縦線が見られます。 
ネウマ譜は4本の譜線が一般的ですが、5本の譜線もあります。通常は音域の広い歌い方ではなく、ごく自然に発声して歌っていたものと思います。ですから音域は1オクターブ+1音でこと足りていました。 (ブログ「幻の音楽 Papalin」より)

今回は以上です。 またご紹介したいと思います。
展示会にぜひお越しください。  


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2022年04月24日

『中世ヨーロッパ彩色写本展』展示写本の紹介

市民ギャラリーにて、4月28日~5月2日にかけて、彩色写本展を行います。

中世のヨーロッパで作られていた手書きの写本の美しさをぜひご覧いただきたく。 (無料です)

今回は「プトレマイオスの世界地図」と「ベアトゥス写本群の世界地図」を紹介します。

展示している「プトレマイオスの世界地図」は、1406年ヤコボ・アンジェロのラテン語訳になるプトレマイオスの「地理学」の数多くの版の中で、地図的表現および描写の精密さという点で、最も丹念に制作されたものの1つです。

プトレマイオス自身が作成した地図は失われましたが、「地理学」に記された当時の様々な場所(約8000か所)の座標情報が記されており、「地理学」が1300年頃に再評価された際、その座標情報を使い、地図製作者はプトレマイオスの世界像を再構成することができました。現存する最古のプトレマイオス図は、12-13世紀に制作されたギリシャ語表記のものです。
地図は下記の構成になっています。
 ①居住空間又は既知の世界の地図
 ②ヨーロッパ図   10図 
 ③リビア・アフリカ 4図
 ④アジア      12図
下の2点はヨーロッパ図の中のイギリスとスペインの地図です。ギリシャ・ローマ時代の完成度には驚かされます。




一方、ベアトゥスの黙示録註解書に描かれている世界地図ですが、黙示録を含めた聖書には出てこない「世界地図」がなぜ描かれているのか。 これは註解に挿入された「語源論」などを図像化したものだそうです。
これらの地図にはイスラーム圏の都市への言及がないことから、「現実の世界」ではなく「キリスト教徒にとってあるべき世界の世界」が描かれているといえるが、その一方、レコンキスタによって新たにキリスト教圏に組み入れられた都市が次々に付け加えられる点に現実世界の反映を認めることもできる。
       久米順子「千年紀を超えて-レコンキスタの進展と盛期中世のベアトゥス写本」等より
このような世界地図をOT図(またはTO図)と呼び、完本22写本のうち14写本に世界地図が描かれています。
キリスト教会は古代科学を異端だとして排撃し、聖書こそが正しいとする価値観を作り出したのです。
 中世のキリスト教会においては、地球球体説は否定されました。もし地球が丸いなら、自分たちの足の下(地球の裏側)には、別の人々が暮らしていることになります。これは教会としては許せないことだと見なされたのです。




OT図(TO図)の特徴は、
特徴① 東を上にする
 TOマップでは東を上にします。東を上にする理由は、旧約聖書の創世記から読み取れます。神がエデンの園を東の果てに作ったという記述があるからです。 
    東が上 ← エデンの園は東の果てにある

特徴② 中心は聖地エルサレム
 TOマップの中心、つまり円の中心点には、キリスト教の聖地エルサレムが描かれています。
 
特徴③ T字は川と海
 T字は、3つの旧大陸を分ける境界線です。
 中心から見て下方(西)へ伸びる線が地中海です。ヨーロッパとアフリカの境界線です。
 中心から見て右方(南)へ伸びる線がナイル川(または紅海)です。アジアとアフリカの境界線です。
 中心から見て左方(北)へ伸びる線がドン川です。ヨーロッパとアジアの境界線です。
 (注:これら境界線とされた地形は、現在の境界線とは異なります)
   
特徴④ 外周は海
 外周は海です。オケアノスと呼ばれます。英語のオーシャンのことです。
 この海の外側には何もないわけではなく、外の陸地が存在すると考えられています。
   (ジオグラファーズ ~無料で地理を学べるブログサイト~ より 引用)
   
古代ギリシャ・ローマ時代には「地球は丸い」という科学的根拠に基づいて世界地図が描かれていましたが、キリスト教世界では別の世界がありました。  


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2022年04月20日

『中世ヨーロッパ彩色写本展』展示写本の紹介

市民ギャラリーにて、4月28日~5月2日にかけて、彩色写本展を行います。

中世のヨーロッパで作られていた手書きの写本の美しさをぜひご覧いただきたく。 (無料です)

今回は動物の写本や医学写本などを紹介します。
 
①動物寓意書
 12世紀中頃から13世紀中頃にかけてイギリスで流行した挿絵付きのけもの図鑑の代表写本。陸上の獣・空を飛ぶ獣・海の獣に分けられて、それぞれ野生動物から空想上の幻想的な獣までその習性と特徴とをキリスト教的教訓とを結びつけて、そこに寓意や諷刺を込めた内容となっています。
140匹以上の説明が135点の挿絵とともに描かれていて、キリスト教徒の道徳的教化、布教に大きな役割を果たしました。
最初に出て来る動物はライオンです。

(上段)猿を食べて自分の病気をなおすライオン
(中段)3人の旅行者の命を救う慈悲深いライオン
(下段)白い雄鶏を恐れるライオン

(上段)山の頂上を歩き回るライオン
(中段)ライオンと3匹の幼い子供ライオン
(下段)2匹のライオンが、生後3日の赤ちゃんライオンを生き返らせる

次は象に乗った兵士です。

城のような砦を背に乗せた象。砦の兵士が象を取り巻く敵の軍隊を攻撃している場面。

想像上の生物として、まずはフェニックスです。  

木の枝に作られた燃える薪のなかで羽を広げて甦るフェニックス。

次にセーレンです。

セイレーンは、もともとは半人半鳥で下半身は鳥のギリシャ神話の怪物でしたが、中世では下半身が魚で描かれることが多くなりました。姉妹で描かれ、この絵では3姉妹になっています。 美しい歌声で人を惑わし、海に引きずりこんだり、食べたりすると恐れられていました。 同様な精霊で川に住む魔物にローレライがいます。

②カノッサのマチティルダ伝
 有名な「カノッサの屈辱」の舞台となったカノッサ城砦の主マティルダの伝記です。 カノッサ家の歴史やマティルダの生涯が記されています。

マティルダの肖像です。

「カノッサの屈辱」の場面で、玉座のマティルダに跪いて教皇への取次ぎを嘆願するハインリヒ4世を描いています。
右側の座っている女性がマティルダ伯です。中央で跪いているのがハインリヒ4世で、左の人物はクリュニー修道院長ユーグで、当時の修道会では非常に権威を持っていて、この時はハインリヒ4世の代父として「叙任権闘争」での調停役を務めたが、成功には至らなかった。

今回は以上です。 また紹介したいと思います。
展示会にぜひお越しください。



  


Posted by おもちゃシューリーズ  at 15:49Comments(0)写本

2022年04月17日

『中世ヨーロッパ彩色写本展』展示写本の紹介

市民ギャラリーにて、4月28日~5月2日にかけて、彩色写本展を行います。

中世のヨーロッパで作られていた手書きの写本の美しさをぜひご覧いただきたく。 (無料です)

今回は詩編などの写本を紹介したいと思います。
当時の詩編写本(Psalter)は、キリスト教で『旧約聖書』の「詩編」、教会暦、聖人への祈りなどを内容とする分厚い書物で、中世の終わりごろに『時祷書』(時課経)が正式に現れるまで、おもに教会や修道院や富裕者や初心者がその日およびその時間の礼拝で具体的に何を歌い、祈るかに使われたもので、綺麗に挿絵が施されているのが常でした。(Wikipediaより)

①ラットレル詩編
1325年~1340年にイギリス北部のラットレル卿が制作した詩編写本。350×245の大きさで309葉の羊皮紙に描かれた大部の写本。中世の生活とともに、人間の頭と動物や鳥などの体が組み合された想像上の怪物が多数描かれています。 ただ、本文内容と関係のない挿絵がこれだけ描かれている理由はよくわかりません。ひょっとすると退屈な文章を少しでも面白くするために描かれていたとか。

本文の周辺の余白部にいろいろな絵が描かれています。

2足歩行のイノシシ顔の動物?

カモノハシのような口をしたドラゴン?

顔がしっぽにもある動物
などなど、ハイブリッド動物がそこかしこに描かれています。
また、当時の生活風景もいろいろ描かれています。

牛で鋤を引っ張って畑を耕している様子。

化粧をしているのか、治療をしているのかよくわかりませんが、目を見ています。

肉を焼いている様子ですか。バーベキューのようです。

②マックルズフィールド詩編
1330-1340年頃のイギリス東部で制作された写本で、豪華に彩色されています。 大きさは170×108㎜という小型の縦長ですが、252葉の羊皮紙に美しく彩色され、ラットレル詩編同様に挿絵にはハイブリッド怪物とともに擬人化された動物などが描かれています。中世の生活も描かれていますが、ラットレル詩編ほどではないです。
最後の所有者、マックルズフィールド伯爵にちなんで命名されています。

写本の1枚目の表(左ページ)と裏(右ページの左側)と2枚目の裏(右ページの右側)です。

兎と犬がパイプオルガンを弾いているようです。

上半身が人間で下半身が動物の2人が争っている?

エイのような巨大な生物に驚いている様子。

何をしているのかよくわかりませんが、猿が人のお尻を覗き込んでいる?

こちらもまたの下からのぞいていますが、お尻がまるみえです。

文章の最初の文字が彩られていますが、何の場面かはわかりません。なにか聖書のなかの話でしょうか。

今回は以上です。 また紹介したいと思います。
展示会にぜひお越しください。  


Posted by おもちゃシューリーズ  at 16:22Comments(0)写本

2022年04月15日

『中世ヨーロッパ彩色写本展』のご案内

市民ギャラリーにて、4月28日~5月2日にかけて、彩色写本展を行います。

中世のヨーロッパで作られていた手書きの写本の美しさをぜひご覧いただきたく。 (無料です)

スペインで主に制作された黙示録写本が中心ですが、今回は特に時祷書を中心に紹介します。 
時祷書というのは、司祭や修道士ではなく平信徒たちが祈りを捧げるときに用いた書物で、定時の祈りを行うときにどの祈祷を行うのかわかりやすいようにまとめたものです。だんだん豪華になり、貴族やお金持ちにとって豪華な時祷書を所有することは一種のステイタス・シンボルになっていました。
まずは彩色写本の愛好家で有名なフランスのベリー候が制作・所有していた時祷書から2冊。
①ベリー公のいとも豪華な時祷書(美術書)
いろいろな所で紹介されているので、ご覧になった絵もあると思います。

1年間の行事が描かれているページです。これは5月の絵で、若い男女が森に出かけ若葉を手折って飾りにする祭りの様子です。

これも有名な絵です。12か月を黄道の十二宮と対応させているのと同時に、人間の性格や運命とも密接に対応すると考えられていたようです。

②ベリー公の大時祷書(美術書)
これは大きさが縦40㎝横30㎝と、「いとも豪華な時祷書」の2倍の大きさになります。

これもカレンダーを表したもので、10月と11月になります。日付とか曜日の書き方が現在と違うので見方がよくわかりません。しかし、毎年日付と曜日の組み合わせが変わるのに、どうやって使うのか勉強不足でよくわかっていません。

③ヴィスコンティ時祷書(美術書)
ミラノ公ヴィスコンティの注文で2人の画家が手掛けた時祷書です。民間の裕福な人が制作した典型的な時祷書です。独特の装飾に彩られたイニシヤル文字が特徴的です。


④ローアン時祷書(美術書)
15世紀前半にフランスのアラゴンのアンジュー侯爵夫人が制作を委託したとされる写本。

「横たわる死者とキリストの間で、天使と悪魔が死者の魂を奪い合っている(世界でもっとも美しい装飾写本より)」とのことです。

⑤エティエンヌ シュヴァリエ時祷書(美術書)
 15世紀中頃、印刷術が発明され写本の衰退がはじまる時期に制作された美しい写本です。ただ、挿絵の部分が切り取られた形でしか残っていないため、本の大きさもわかりません。
 
受胎告知の場面。一点透視の遠近法を用いて、挿絵というより1枚の絵画のような用言になっています。(世界でもっとも美しい装飾写本より)

今回は以上です。 また紹介したいと思います。
展示会にぜひお越しください。





  


Posted by おもちゃシューリーズ  at 14:14Comments(0)写本